非営利型法人といえど、消費税については株式会社等と同じ基準で判断されます。
行っている事業が収益事業であるか非収益事業であるかは関係ありません。
よって、法人税の申告納税義務はないけれども消費税の申告納税義務はある法人も多く存在します。
◇消費税の原則
<課税対象>
消費税の課税対象は、「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、貸付け及び役務の提供と外国貨物の引取り(輸入取引)」とされています(国税庁HPより)。
非営利型法人が行う取引においても、上記に該当すれば消費税が課税されます。
よくある収入を区分すると以下の通り。
収入 | |
不課税 | 補助金、寄附金、会費収入 |
非課税 | 預金利息、有価証券の運用益 |
課税 | 受託料収入、商品の販売代金、不動産の賃貸料、法人が受け取る講師代 |
<納税義務>
基準期間における課税売上高が1,000万円を超えると消費税の納税義務が生じます。
ただし、基準期間がない場合の免除の特例等も存在しますので、納税義務の有無は消費税の制度をしっかりと理解したうえで、もしくは税理士・税務署等に相談のうえで判断しましょう。
また、納税義務が発生しない場合でも、「消費税課税事業者選択届出書」を選択しようとする課税期間の初日の前日までに提出することで課税事業者になることができます。
<計算方法の選択>
原則的な計算方法(本則課税)のほかに、「消費税簡易課税制度選択届出書」をその適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに提出することで、基準期間における課税売上高が5,000万円以下の課税期間について「簡易課税制度」を選択することができます。
◇特定収入の計算
公益社団・財団法人、非営利型の一般社団・財団法人、社会福祉法人などの「公益法人等」に該当する法人は、特定収入がある場合には、仕入税額控除の調整を行う必要があります。
<制度の趣旨>
公益法人等は補助金、会費、寄附金等の対価性のない収入(=不課税売上)により運営される場合が多くあります。これらによって賄われる課税仕入れについての仕入税額控除が一般の事業者と比較して消費税の計算上有利に働くため、その差を是正するために、仕入税額控除を調整する計算を行います。
<調整計算を行わなければならない場合>
以下の3つの要件を全て満たした場合に、仕入税額控除の調整計算を行う必要があります。
①公益法人等であること
②消費税の課税事業者であり、本則課税を採用していること
免税事業者もしくは簡易課税制度を選択している課税事業者は、実額による仕入税額控除は行わないため、調整計算は必要ありません。
③特定収入割合が5%を超えていること
対価性のない収入すべてが特定収入に該当するわけではないので、まず特定収入かどうかを判定し、特定収入割合を計算することになります。
⇒詳細はこちら:国税庁パンフレット『国、地方公共団体や公共・公益法人等と消費税』
◇申告・納税の期限
申告・納税は課税期間の末日の翌日から2か月以内が原則です。
「法人税の確定申告書の申告期限の延長の特例」の適用を受ける法人は、「消費税申告期限延長届出書」をその適用を受けようとする事業年度終了の日の属する課税期間の末日までに提出をすれば申告・納税期限を1か月延長することができます。
延長を受ける場合、法定期限(課税期間の末日の翌日から2か月以内)よりも後に納付された税額に対しては延滞税が課されるため、見込み納付という制度があります。
◇任意団体と消費税
任意団体は法人ではありませんが、一定の要件を満たす場合は非営利型法人と同様に消費税の申告納税義務が発生する場合があります。また、特定収入の計算も該当しますので、ご注意ください。
◆参照
国税庁:消費税(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/shouhi.htm)
国税庁: 国、地方公共団体や公共・公益法人等に特定収入がある場合の仕入控除税額の調整(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6495.htm)
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