相続

生前贈与のメリットと注意点

令和4年度の税制改正大綱が発表されました

今回の税制改正で『相続税と贈与税の一体化』が行われ、生前贈与の恩恵が受けられなくなるのではないかと注目されていましたが、今回は見送られました。しかし今後も改正の可能性があり、改正が行われる前に生前贈与を行うべきかどうか悩んでおられる方も多いはずです。
ですが、きちんと手順を踏んでいなければ、思わぬトラブルが発生する可能性もあります。生前贈与を行う際はメリット注意点についてしっかり確認しましょう。

生前贈与とは

生前贈与とは、親から子に財産を贈与する場合など、生存している個人から別の個人へ財産を無償で渡すことです。現在の制度では以下のメリットがあるため、有効な相続税対策として活用されています。

◆ 生前贈与で相続財産を減らし、相続税を節税できる
110万円の非課税枠がある暦年贈与や、様々な特例を活用すれば贈与税も節税できる

たとえ親子間であっても、贈与に対しては贈与税が課税されます。しかし現在は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかるとされているため(暦年贈与)、この非課税枠を活用して少しずつ長年にわたって贈与していけば、相続財産を減らしつつ贈与税も節税することができます。
また、一定の要件を満たした住宅取得等資金や教育資金の贈与について、一定金額が非課税となる特例などもあります。

◆ 贈与する相手を自由に選べる

相続では遺言書がある場合などを除いて財産を受け取る人(相続人)は法律で決められていますが、贈与にはそのような制限がありません。

◆ 財産を渡す時期を自由に選べる

相続による財産の移転は相続が発生したときに行われますが、生前贈与は好きなタイミングで実施できます。価値が変動するような財産は評価額が低いタイミングを見計らって贈与すれば相続税または贈与税を節税することができます。

生前贈与する際の注意点

① 銀行振込で行う

現金手渡しの生前贈与は証拠が残らないため、税務署から否認される可能性があります。振込人の名前や金額が通帳に記載される銀行振込など、贈与の客観的な記録を残すことが出来る方法で贈与しましょう。

② 受贈者が管理している通帳に振込みをする

名義預金(名義人と所有者が違う預金)と言われないように、財産を受け取る者が管理しており、自由にお金を出し入れできる通帳に振り込むようにしましょう。

③ 贈与契約書を作成する

贈与は法律的には口約束で成立しますが、証拠として書面で残すことをお勧めします。
贈与契約書を作成する際には次の5つの要素を記載するようにしましょう。
  •誰があげるのか(贈与者の氏名・住所)
  •誰にあげるのか(受贈者の氏名・住所)
  •いつあげるのか(贈与契約締結の日付、実際に贈与を実行する日付)
  •何をあげるのか(贈与財産の種目・内容・金額・住所、その他財産に関する情報)
  •どうやってあげるのか(贈与の方法)

④ 死亡前3年以内の贈与には相続税が課税されることに注意!

現行の法律では、贈与をしてから3年以内に贈与をした人が亡くなった場合、その贈与した財産も相続財産に加算して相続税を計算します。(※ただし、相続で財産を取得しなかった者への贈与は亡くなる前3年以内であったとしても、加算の対象外となります。)

『相続税と続税と贈与税の一体化』とは?

政府は『相続税と贈与税の一体化』によって中立的な課税を実現すると説明しています。
現在は上記のような生前贈与による恩恵が受けられるため、コツコツと生前贈与によって財産を移転した場合と、相続によって一時に財産を移転した場合で、納税額に大きな差が生じる場合があります
それを「中立的でない」として、どのタイミングで財産を移転したとしても最終的な納税負担が同じになるような制度(=相続税と贈与税を同じ制度に組み込んでしまう)を目指しているのです。そうなれば、現在のように事前に相続税対策を行う余地はどんどん少なくなります。
今後の動向が気になるところです。

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