病院もお蔭様で着々と成長していった。飛行機のフライトと同じように、何の業務も立ち上がりのエネルギーは凄まじいものがあり、動き出し安定状況になると、エネルギーも少なくても動くものである。事務所の立ち上がりの時に浩を弟のように可愛がって、獅子奮迅してくれた人に黒石社長がいた。このようなこともあって、黒石社長のことで何かあったらと常日頃考えていた。黒石社長が、子どもを抱えながらも懸命に生きようとするある女性の方に、お店のオープンまでの銀行の段取りから内装工事までありとあらゆる応援をしたものの、オープン後は、社長への恩義も何もない噂を聞き、浩は怒り、「あなたはそんな非情な振舞いをしていいのですか?人間という動物は恩を感じる動物なんですよ」と、目上であったが強く迫った。するとその女性も切れたようで「あんたに関係のないこと、ガタガタ言うなら夜の帝王ミロの会長に言いつけてあんたを熊本から抹殺してしまうよ」まさにその顔は中国劇で見た、いつもの優しい顔から一変し鬼の面相、浩も腰を抜かしそうになった。一息つき心を落ち着かせて、「ミロ会長の噂は聞いている、言うなら言ったが良い」開き直って言ったものの、この一言が精一杯の反論であった。ところが後々にこの女性の方ともミロ会長と大変親しくなる日が来るとはこの時には露にも思わなかった。この女性の方からは、男気があるということで、お店の会計の顧問になって欲しいとの依頼、それぐらい、地域でも最も繁盛する居酒屋スナックとして多くのお客で賑わっていた。事務所のスタッフの生活のことも心配であったので、夜は頻繁に黒石社長とお店に顔を出した。面白いほど色々なお客、特に事業経営者と知り合った。「おう、あんたが、新進気鋭の若者かい、評判は聞いている。なかなかやるってな」大将ぶった社長もいれば、「ああ、君が噂の、、、」と紳士的な社長、色々なタイプの人間と出会った。浩は、仕事においては、相手の立場を考えての真摯で粘り強く接することから、出会う人出会う人から気に入られて、「うちの顧問になってくれないか?」「当社の顧問になって、当社を一緒に成長させてくれれば」と、多くのオファーを受けるようになり、人財の採用を真剣に考える時期と思った。自分は担当出来ないことも理解して頂き「いやいや、君には年一回の決算報告や、コレ!といった時に会ってくれればいいよ。日頃は素晴らしいスタッフの方がきちんととやってくれることだろうから」さらに上絛君の力は凄く、医療の天皇と迄称されるほど、医療界からのオファーが殺到してきた。総務を担当する松竹君も俄かに忙しくなり始めた。ある日「新卒が入りそうです」松竹君が喜びの声をあげてかけ転んできた。「まさか、このようなチッポケな事務所に」と心の中で思ったものの、心の中は頗る嬉しかった。まさか、が現実になる、このような嬉しい事はなかった。さらに、事務所としても専門家がいない相続のエキスパートの藤光君が入所してくれるようになった。幼少の頃からお互いの母親どうしが同じ宗教、所謂のちのち浩が修行する寺院の信徒で、同じ講、組となり、姉妹のように一緒になって布教活動に励んでいる時に、一緒に連れらて、その時に遊ぶことが多かった。気遣いの特に出来ることから、浩は気軽に色々なことを頼めた。専門家が入ると面白いもので、ある大きな相続の仕事が舞い込んできた。
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