医療レポート

【歯科】適正な人件費とは

昨今、お客様から適正な人件費はどのくらいか?自院の人件費率は適正か?との質問を受ける機会が増えたように感じます。雇用を含む経営環境の変化が要因と思われますが、これらの質問については「収益比」ではなく「利益の配分」に着目してお答えするようにしています。

上述の通り、人件費の適正度合いを計る指標に「人件費率」がありますが、この指標は人件費を収益で除して求めるため、高収益の場合は必然的に比率が下がる点や支出した原価を反映していない点から、条件の異なる他院と比較可能な指標とは必ずしも言えません。
そこで、人件費率に代えて人件費を総利益で除して求める労働分配率を用いれば、より正確な比較が可能です。

 人件費率 = 人件費 ÷ 収益
労働分配率 = 人件費 ÷ 総利益(収益 – 原価)

※管理会計では 総利益を限界利益、原価を変動費と表すことが一般的です。

 一例として、令和3年実施の「医療経済実態調査」及び弊社発行の「2022年歯科決算データ集」から歯科診療所の労働分配率を計算したところ、個人立が35.2%と36.5%、医療法人は61.4%と60.9%でした。
筆者の経験則ではありますが、労働分配率が個人立で40%以内、医療法人で60%以内の歯科医院は比較的安定した利益が確保出来ており、職員の追加採用も検討可能です。一方、この数値内で期待通りの利益が出ていない場合は、人件費以外の経費が過大であるため、損益分岐点収益の確認と経費全体の見直しが必要な状況です。

人件費の適正化は解決が難しい経営課題ですが、まずは労働分配率の把握が重要と考えます。

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