労務・研修・その他

新しい仲間を迎えよう~職員採用特集①~

春は人が動く季節。是非とも我が社にも新しい仲間を!
そうは思っても、人が来ない、続かない、などの悩みも尽きない昨今。
社労士が教える“採用のコツ”を実践し、良い人材を迎え入れましょう!

Scene1 採用活動の前に “採用基準”を作りましょう

採用活動の前に「採用基準」をつくることをお勧めします。

というのも、採用のミスマッチによる早期離職の多くは採用選考する企業側がどういった人材がほしいのか?というビジョンが曖昧であったり、採用を急ぐあまり採用基準を満たしているか見極める面接や適性検査ができていないことが原因だからです。

「採用基準」の作成は、職場内で、募集する職種の仕事内容に精通し人を見る目に比較的長けている
職員に参画してもらい、以下の4つの質問についてグループディスカッションをするとよいでしょう。

1.適性

募集する職種や企業の社風や環境を考えた上で、向かない・続かないと思われるのはどんな性格の人か?
例)自分の意見が言えない人、大人しい人、感情認知力が低い人、気難しい人、等

2.スキル

募集する職種に従事する人は、どんな経験やスキルを備えていた方が仕事を過度の負担にならずスムーズに遂行できるか?
例)簿記〇級、実務経験〇年以上、○○のソフト操作が○○のレベルで出来ること、等

3.方向性

どんなことにやりがいを感じる人が向いているか?
仕事を選ぶ際にどんなことを重視している人であれば長く働いてもらえそうか?
例)○○のキャリアを積みたい、○○で社会に貢献したい、仕事とプライベートの両立、等

4.労務リスク

仕事内容や労働条件について、入社後不平不満が出そうな部分は何か?
採用後に分かると困るので、事前に知っておいてもらいたいこと、知っておきたいことは何か?
伝えておくこと▶例)目標が高いので成長スピードや環境の変化が早い。残業が多い。昇給額が少ない。休みが少ない。転勤が多い。
伝えてもらうこと▶例)持病がある等

優先順位をつけて面接選考や適性検査のチェック項目に追加し、見極めるための口頭質問や適性テストの問題を立案していきます
実際の採用選考では、面接時の受け答えや適性テストだけで人を見極めるのは非常に難しく、一朝一夕にできることではありません。それでも、採用基準をつくって見るべきポイントを明確にすれば、ぐっと注意深く観察するようになり、回数を重ねるごとに「次はこのような質問やテストを実施すれば良いのでは?」といったアイデアも生まれ、どんどん採用選考の精度が上がっていきます

Scene2 いざ、採用面接 面接官の心構え

人材の採用選考にあたる人事担当者の役割は、採用基準を充たした人材かどうか見極めることだけが役割ではなく、応募に来ていただいた求職者に対して、企業のPRを行い「就職したい!」と思わせる役割や、求職者が自分自身に合った職場であるか判断できるだけの情報を提供する役割も担っています。

そこで人事担当者に実践していただきたい求職者に好印象を与えるポイントを4つまとめてみましたので、是非チェックされてみてください。

1.横柄な態度を取らず、謙虚な姿勢を出す

選ぶ立場であるという上からの気持ちがあると、ついつい横柄な態度になったり、言葉遣いが馴れ馴れしくなってしまうことがあります。求職者からではなく、面接官から先に挨拶をするくらいの気持ちでちょうど良いと思います。名刺も準備しておき積極的に渡す行為も、応募者にとって好印象を与えます。謙虚な姿勢で応対をしましょう。

2.相手を褒める

面接に来た求職者は緊張されている方がほとんどです。緊張を解す意味でも、企業に対して良い印象を持っていただく意味でも、事前に履歴書や職務経歴書に目を通して褒めるべきポイントを2~3ピックアップしておき、最初に伝えてみましょう。求職者も緊張が解れ、本来の持ち味が発揮しやすくなります。

3.企業のPRを積極的に行う

この人は採用したい…!!と思った方には特にですが、事業内容や働きがいを感じる部分、福利厚生を含めた労働条件など御社の魅力を積極的にアピールしましょう
また、良い部分だけを話すのではなく、御社の課題や仕事をするうえで現時点では受け入れてもらわざるを得ない条件など正直に伝えておくことも大切です。不安要素を話す際は、それをカバーする材料として今後どのような改善計画を考えているかを併せて説明することが重要です。

4.活躍している社員を知ってもらう、交流の機会を設ける

御社のPRと併せて、現在職場でどのような人材が活躍しているか?を求職者に紹介することも大切です。時間を設けて求職者と職員との交流の時間を取り、求職者から職場の状況について質問できるようにすると、PRによりリアリティーが出て、求職者も、自分自身にマッチした企業であるかどうか判断がしやすくなります。

!面接時の注意点!

採用選考は求職者の基本的人権を尊重するとともに適性・能力に基づいて行なわなければならないことから、厚生労働省のガイドラインで以下の事項の質問や調査を実施することは禁止されていますので注意しましょう。

本人に責任のない事項の把握
 ┗本籍、出生地、家族、住宅状況、生活環境、家族環境などに関すること
本来自由であるべき事項の把握
 ┗宗教、支持政党、人生観、尊敬する人物、思想、労働組合、購読新聞、愛読書などに関すること
特定の採用選考方法の実施
 ┗身元調査などの実施、合理的・客観的に必要性が認められない健康診断の実施等

Scene3 採用決定 労務担当者が新入社員採用時に準備すること

社員を採用した際に必要となる入社手続きは労務担当者の重要な業務です。
新入社員採用時に、雇用契約書等の必要な書類の準備や各種手続き(健康保険や厚生年金などの社会保険や、雇用保険手続)を速やかに行うことは社員からの企業への信頼感を高めます。
以下に準備しなければいけない事項をまとめましたのでご確認ください。

1.雇用契約書や誓約書の作成・締結

できれば入社日前に雇用契約書や誓約書を作成し、読み合わせをしながら新入社員に説明して、サインをもらっておくことが望ましいです。入社日前の交付が出来ない場合でも、採用後早めに作成し、サインをもらうことをお勧めします。

主な契約書・誓約書関係
…雇用契約書、入社誓約書、身元保証書、機密保持誓約書、自家用車通勤許可申請書、等

2.備品関係やネット環境の準備、教育計画の作成

入社前に社員に貸与する備品やIDを手配して、スムーズに職場環境に適応できる準備を行うことが大切です。また、教育計画を早めに作成しスケジュールを確保しておくと、新入社員が入社後早い段階で社内のルールを理解し、組織に順応するのが早くなります。

備品等 …社員証、制服、机・椅子、下駄箱、ロッカー、電話、パソコン、駐車場、等
インターネット環境等 …メールアドレス、社内イントラ用ID発行、等
教育計画 ・教育カリキュラムについて誰が、何を、いつまでに実施するのか?
     ・新人教育オリエンテーションの実施日予定確保
     ・新人教育・お世話係(メンター)を誰にするのか?  等

3.雇用保険・社会保険・税務関係手続き・その他

採用後、以下の書類等を速やかに回収し、手続きを行いましょう。
1.雇用保険被保険者証 …雇用保険手続に必要な書類(新卒入社で前職ない場合は不要)
2.年金手帳 …社会保険手続に必要(配偶者を社会保険の扶養に入れるなら配偶者分も必要)
3.源泉徴収票 …前職があり、年内中に給与の支払いを受けている場合(年末調整で必要)
4.給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 …給与計算の税額計算や社会保険扶養対象者確認に必要
5.マイナンバー  …住民票記載事項証明書や通知カード・マイナンバーカード写し(雇用保険・社会保険に必要)
6.給与振込先届出書 …給与の支払口座確認に必要
7.各種手当支給届出書・資格証明書 …社内で規定されている各種手当の支給対象か確認に必要
8.健康診断書 …入社前に準備してもらうか、入社後速やかに健康診断を実施

採用活動でお悩みの方へ①

最近、求人を出しても応募がないのですが、どのような取り組みをすると良いでしょうか?

同じようにお悩みの経営者の方は多いです。
まずは、求人市場で競合となりえる類似業種で、かつ業績が堅調な企業の求人広告の内容をリサーチしましょう。
自社サイトや求人ページの内容、ハローワーク以外で利用している求人媒体、PR文章の書き方など、参考にできる箇所がたくさん見つかると思います。

なるほど…(リサーチ)。
…給与や年間休日日数など、他社の条件が弊社よりも良いのですが、すぐ同じ条件にするのは難しいです…。

競争原理が働きますので、給与や年間休日などの労働条件については近隣地域の業界水準のトップと平均の中間値程度以上を目指す努力が必要かと思います。ただ、無理をしてトップを目指す必要はありません。
それよりも自社サイトや求人ページに、働きがいや職場の人間関係の良さ、教育制度や福利厚生が充実していることなど、御社の魅力を漏らさずPRすることの方が大切です。
また、経営者の創業当初の譲れない思いであったり、御社を今後どのように発展させたいのか?どのような職場にしたいのか?それは何故なのか?といった求職者の方の共感を得られるような理念や目標を明記することも重要です。
同じような事業内容や条件を掲げている数ある企業の中から、御社こそが求めている企業だ!と求職中の方に思ってもらえるようにPRしましょう。

採用活動でお悩みの方へ②

求人広告以外で、採用活動を上手に進められている企業が取り入れている手法があれば教えてください。

コストをあまりかけないという視点で考えるとリファーラル採用が有効だと思います。いわゆる縁故採用のことです。
採用候補になり得る人材を、経営者だけでなく社員にも紹介してもらう取り組みのことをいい、大手企業でも積極的に取り入れられています。
実際に仕事内容が分かっている社員からの紹介なのでミスマッチの確率が減るメリットも有り、有効な人材獲得方法として注目されています。

幹部はともかく、一般社員が知り合いを紹介してくれますかね…?
少し不安です。

さすが社長、着目するポイントが素晴らしいですね!!
そのとおりです。このリファーラル採用の成功の秘訣は、社員が心から大事な友人や知人を紹介したい企業だと思ってくれているかにかかっています。
協力を呼びかけて社員の皆さんが表面的に「協力します」と言ってくれたとしても本当に動いてくれないと意味がありません。
そのためには、社員に対して本音で友人に紹介したい企業と思ってくれているか?をヒアリングし、勧めたくない理由があるのであればそれを聞き出し、改善できるところから改めていく必要があります

社員に人を紹介してもらえるように、たしかにヒアリングは必要だと思いますが…。紹介したくない理由があったとしても、なかなか社員は本音を話しづらいのではないでしょうか?

そうですね。社員の立場からすると社長の顔色を伺って、思っていることがあっても本音で話をしづらいと思います。
対策としては社長の方から、積極的に社員に対して、知人を紹介したくなるような職場環境を作っていきたいという思いを伝えること、意見を出してくれた人に対してマイナス評価を行わないこと等を事前に明確に伝えること、などが必要です。
社員が出してくれた意見の中から、採用後の定着率のネックになっていた要因が分かることもあります。職場環境を見直すきっかけにもなりますので是非取り組んでいただきたいと思います。

分かりました。職場環境を改善する取り組みの一貫として取り組んでみます!
アドバイスありがとうございました!

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