栗谷利夫著「夢現」

『MUGEN(夢現)』第61話  「女性の活躍」

「ねえ、今の男性中心の議員のあり方をどう思う?」

恰も姉のような存在の佳代夫人から、いつものようにクッション言葉の無い電話であった。「今の議会に女性ゼロは疑問を呈すると言うことでしょう・・」続けて話そうと思っていたら、言下に状況を即座に理解してくれたことを喜ぶかのようにテンションMAX「そうそう、そうなのよ。男女のバランスが大切、ジェンダーフリーよ。社会をより良くするのに、女性議員がいない議会なんて異常事態と思わない?ヒエラルキーではいけないの、市井の事は女性の方がより理解しているのよ。地方政治は市民直結でなくていけないのよ」窘める話ぶりで、反論すると鬼◯の刃が今にも飛んで来そうだったので、「はい!異論ありません」と答えたことにより、さらにヒートアップ「誰か議員に適した女性の人を探してよ!」まるで卑弥呼からの勅令が下ったかのような雰囲気に飲み込まれた浩は、「ははっ!いますいます」と即答してしまった。「誰なの」一瞬躊躇したものの、頭の中は七人の女性の顔がダーツボードが回るかのように、そして一本の矢「女性事業家で四十代の大池千代さんがいます。とてもアクティブでありバランス感覚もよく、、、」「あれ!聞いたことのない名前ね。でも若いし、直ぐに会わせてよ」いつになっても伍する関係には程遠かった。

 女性が活躍することへの思いの歴史は明治早々から始まっていて、二千二十四年の新五千円札のモデルに津田梅子、政府が欧米に派遣した「岩倉使節団」最初の女子留学生で、私学女子高等教育機関として日本初の「女子英学塾(現津田塾)」を千九百年に設立、女性の地位向上・個性を尊重した教育に努め、今の社会が最も求める人物で、熊本にもこのような人物が後々登場することとなるのであった。

 浩は、大池社長とはかなり古くからの友人で、地場中堅企業のナンバー2から独立、出会ったのは水前寺共済会館グレーシアでのある会合、ファーストインプレッション、真野響子に似た女優のようで、あまりにも美しくて茫然と立ち竦んだ事を思い出した。以来交流、甲斐性のある人で、次第次第に互いの信頼関係が築かれた。ある時、東京のテレビ局と上海に視察、大池社長は既に現地に製造工場を建設、浩はリモナイトの市場調査、テレビ局は当時日本で爆発的に売れている商品の現地工場を取材し放映するという段取りであった。浩としては初の中国、喜びは束の間、到着した翌朝に死ぬような下腹部の激痛に立ち上がれず、浩にとっては拷問かのような終日蟄居、バリでの表田豊作の苦しみが伝わって来た。当時の訪問者にはよくある現象でもあった。歯を食いしばって翌日は予定の工場を訪問した。期待に反し驚くような内容であった。その商品は日本では一万円、同じような商品は通常千円もしないぐらいであるが、女性の喜ぶようなキャッチフレーズに日本では大ヒット商品となっていた。TVキャスター風の副社長兼工場長の女性に「本当にそのような成果なんですか?」と質問をしてみると、その答えにビックリ⁉️浩は唖然とした。良い会社は多くある中に、このような会社もあるのかと、これからは海外への取引には、リスクヘッジをしっかりとしていかなければと思った。ホテルに帰り、ホテル内のクリニックに行くと女医が一人いて、わからない中国語で「你好吗(具合は如何ですか)?」言葉は通じないので、腹をおさえてのジェスチャーでその苦しみを伝えたら、薬を出されたものの、効き目の無いような薬で、こういう時には抗生物質の薬でなくてはと思い、以来、必ず薬を携帯する様にした。若さというか、信念というか、程よく収まった最後の夜の食事の後のラウンジ、大池社長に議員の事を徐に話してみた。その瞬間、獲物を獲る鷹の目のように光り輝く目、懐疑心と共に、ファーストレディには会ってみたい様子であった。

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