栗谷利夫著「夢現」

『MUGEN(夢現)』第49話 ハート&グリーン2~

今までに選挙への応援を市民として行ったことはあるものの、浩たちは、選挙対策本部入ることが初めての経験の者ばかり、その中にあって、住む町と直結する市長選挙に戸惑いとともに期待も大きく膨らんだ。浩は、事務所も寄る時間が全くと言って良いほどなくなって来たが、上條、松竹、藤光、尾中、二宮そして斉村、七島、石本、岩川、池山、更に外村、上水の女性陣たちが確りと支え、懸命に生きる市民のみなさんにより豊かな幸せを感じるまちを創るには?そのようなことを事務所のみんなも考え、毎日が輝く太陽が照らしているように明るかった。プレハブ造りの選挙事務所が立ち上がった。闘うアジトができたようで子どもごころのように楽しくなった。朝は、七時から数名の中心メンバーは集合して、朝礼、その後昨日の報告それから今日の活動予定、報告の中身は、後援会名簿の提出状況、人数の確認、日々名簿が積み上がっていく様子は大きな喜びであった。今回は、有力候補三名ということで、十万票が当選ラインではないかとの報道、そうすると名簿は少なくとも三倍の三十万人は、、、果てしない数に驚きもあったが、日々積み上げていこうとの話に収まった。一人の候補は、元自治省出身で、自民党が推すということ、もう一人も県議出身で組織も盤石、この有力二人にどこまで追いつくことが出来るかは全くの未知数であった。あと数名の候補予定者もいた。最初の意気込みは良かったものの、事務所は閑散とした状況で浩たちは次第に不安になって来た。その時、人の良さそうな老人が「大丈夫、大丈夫、選挙は三か月ぐらい前にならんと動かないもんなんだ」その言葉に焦る浩は、「早く動く分それだけ効果が大きいのではないのですか?」「それはそうだが、現実はみなさん仕事や家庭のことでいっぱいだからね。これからどのように盛り上げていくかだね」色々と老人が言うもののピンと来なかったが、初めての選挙、人の良さそうな、信用して良い老人のようであったので、黙って話を聞き続けた。老人が言ったように、いよいよ三か月前に差し掛かった頃、急に人が集まり始めた。「今回立候補する先生には、大変お世話になったので、ご恩返しをしなければ」「私の子は、先生に命を助けてもらったんです、命をかけてお手伝いをさせて頂きます」このような声声、「ああ、今までの生き方が、いざ鎌倉の時に人は動くんだなあ!」と浩は感じ入った。しかし、そうは言っても、このような深い繋がりが無限にある人などは存在しない。そこで打ち出されたのが、ローラー作戦であった。集まった名簿を元に一件一件その名簿の家を訪問し、お願いすることになった。多くの人たちが、特に若者たちが夜に、さらに土曜日曜には昼間にも訪問した。浩もローラーしながら、「こんな町があったんだな。こんなレトロな観光ゾーンにも魅惑の通りが、、、」足でまさに勉強しているような感じになった。そのように選挙活動が進む中、あと一ヶ月と迫った頃、ある親しい方から二人の男性を紹介された。見た目は普通ではあったが、一人の男の目がやや気になった。「我々はここに千人が絶対に入れると言う組織を持っている。その組織を提供しても良い」浩は直ぐさに「ありがとうございます。是非お願いします」兎にも角にも票を伸ばしたい一心から即答したところ、返って来た言葉にびっくりした。「この組織をまとめ、入れさせるためにも、お金が必要に」浩は、「えっ!お金?」すると、目が気になっていた男が「こう言うことは、常識なんだが、、、」浩は、この場で直ぐに断るのは、良くないと思い、「選対本部と打ち合わせて、返事を、、、」すると「こう言うことは、あなたのように権限がある人間がすぱっとやることなんだよ」お金を使わない綺麗な選挙を目指していた浩たちに暗雲が漂い始めた。このような話が急に増えてきた。

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