医療法人の事業承継を検討する際、持分あり医療法人から持分なし医療法人への移行は重要な選択肢の一つです。
この移行にあたって活用が検討されるのが、認定医療法人制度です。

この制度は、一定の要件を満たしたうえで移行計画の認定を受けることにより、出資持分の放棄に伴う税負担の軽減を図りながら、円滑な事業承継と安定した法人運営を支援するものです。
認定医療法人制度の目的
認定医療法人制度には、主に次のような目的があります。
- 出資持分の放棄に伴う税負担を軽減すること
- 医療法人の円滑な事業承継を支援すること
- 将来を見据えた安定的な法人運営につなげること
- 国が認める移行計画に基づき、適正な移行を進めること
認定医療法人に関するデータ①
認定医療法人の認定数(累計)の推移
認定医療法人の数は年々増加しており、制度活用が着実に広がっています。
令和6年下期時点の累計認定数は1,142件となっています。
※病院を有する医療法人を「病院」、病院を有しない医療法人を「診療所」と記載しています。
| 病院 | 11 | 19 | 32 | 49 | 55 | 69 | 87 | 110 | 142 | 212 | 277 | 441 | 441 | 454 | 481 | 510 | 546 | 568 | 589 | 603 | 631 |
| 診療所 | 0 | 2 | 5 | 12 | 12 | 18 | 23 | 33 | 52 | 93 | 127 | 263 | 263 | 276 | 308 | 335 | 375 | 422 | 455 | 476 | 511 |
| 合計 | 11 | 21 | 37 | 61 | 67 | 87 | 110 | 143 | 194 | 305 | 404 | 704 | 704 | 730 | 789 | 845 | 921 | 990 | 1,044 | 1,079 | 1,142 |
(注)認定件数のうち、相続発生後の申請は1割程度とされています。
移行計画認定の要件(改正後)
認定医療法人制度を利用するためには、移行計画について認定を受ける必要があります。
主な要件は以下のとおりです。
認定要件
- 社員総会の議決があること
- 移行計画が有効かつ適正であること
- 移行計画期間が5年以内であること
- 法人の運営が適正であること
運営に関する要件
1. 運営方法に関する要件
- 法人関係者に対し、特別の利益を与えないこと
- 役員に対する報酬等が不当に高額にならないよう支給基準を定めていること
- 株式会社等に対し、特別の利益を与えないこと
- 遊休財産額が事業にかかる費用の額を超えないこと
- 法令違反、帳簿書類の隠蔽等、その他公益に反する事実がないこと
2. 事業状況に関する要件
- 社会保険診療等に係る収入金額が医療保健業務による収入金額の80%を超えること
- 自費患者に対し請求する金額(特定外国人患者請求額を除く。)が、社会保険診療報酬と同一の基準により算定されること
- 特定外国人患者請求額が、一定の範囲内であり、地域における標準的な料金を超えないものであること
- 医業収入が医業費用の150%以内であること
なお、社会医療法人の要件の一つである「役員の親族要件」は、認定医療法人の要件にはありません。
活用にあたってのポイント
認定医療法人制度の活用を検討する場合は、事前確認が非常に重要です。
特に、次のような点を早めに整理しておくことが大切です。
- 法人の現状や決算内容の確認
- 出資関係や親族関係の整理
- 認定要件を満たせるかどうかの事前シミュレーション
- 移行後の運営体制や事業承継方針の検討
制度の適用可否は、法人の状況によって大きく異なります。
そのため、制度の内容だけでなく、現状分析と事前準備をあわせて進めることが重要です。
まとめ
持分あり医療法人から持分なし医療法人への移行は、事業承継や将来の安定運営を考えるうえで有力な選択肢です。
認定医療法人制度を活用することで、税務面に配慮しながら移行を進められる可能性があります。
一方で、認定には一定の要件があり、事前の確認や計画づくりが欠かせません。
制度活用を検討される場合は、早い段階から準備を進めることをおすすめします。
出典
厚生労働省
「持分の定めのない医療法人への移行計画認定制度(認定医療法人制度)の概要と留意点」
医療経営支援チーム 岩岡修一郎