診療報酬改定や人口減少などの外部環境の変化に伴い、以前にも増してクリニック経営に必要な収益確保が難しい状況となってきています。
さらには上記に加え、より深刻な経営課題として「職員の確保」を挙げられる院長先生も多くいらっしゃるのではないでしょうか?10~20年前までは、求人を出すと複数人から応募があり、選考の結果、断りの連絡をするケースも多かったように思いますが、昨今においては全く応募がなかったり、採用決定後の入社辞退も珍しくはないようです。
このような変化の要因として、医療従事者総数の減少が考えられますが、事務員などは社会全体の賃上げにより医療業界の賃金水準の優位性が薄れ、他業種へ流出している可能性もあります。さらにはスマートフォン等の普及による求人媒体の変化と希望条件での検索が容易になったことも求人獲得競争の激化の背景にあるのではないかと推察されます。
ただ、このような採用困難の状況にあっても人件費については「出来る限り抑えたい」という考えは従前から変わっていないように感じます。確かに利益を確保するためにはコストのコントロールが必要であり、経費の中でも支出割合の高い人件費を一定水準に保つことは非常に重要です。ただ、人件費に対する考え方がアップデートされないままでは、昨今の求人獲得競争において勝ち残ることや安定したクリニック経営を継続することは困難ではないかと考えます。
そのため、担当先の院長先生には人件費を「コスト」ではなく「投資」と考えて頂くことをお勧めしています。賃金水準のアップも重要ですが、主な取り組みは職員数の充実です。過剰人員となることは決して好ましいことではありませんが、余裕のある人員配置は以下のような効果が期待出来ます。
- 他の職員が休みやすい職場環境づくりにつながる
- 退職者が出た場合の求人費用の抑制や既存職員の負担軽減につながる
- 対応出来る患者数が増えれば、収益アップも期待出来る
- 税額控除による節税効果 ※一定要件あり
ただし、残念ながら上記の取り組みはすべてのクリニックで実現出来るわけではありません。意思決定に当たっては「損益分岐点収益」や「労働分配率」を確認し、支出可能な余力が自院にどのくらいあるのかを正確に把握することが必須です。計算方法や④の税額控除については顧問税理士等にお尋ね下さい。
医業経営支援チーム 園木 暁
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