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第4話 父の戦争時代1

 俄かに戦争が拡大、いよいよ父にも赤紙がやってきた。
この時の父も母も態度は、顔ひとつ変えずに
「ありがとうございます。お国の為に・・・」
 心中はどのようなものであったのか、晩年の母に聞く事ができた。
「何故戦争するのかわからなかった。人と人が争う不幸を止めなければ」
 そういう思いを込めてはいたものの、聡明な母は世界の分析を母なりに行っていたようで
「世界の歴史というか地球の歴史というか、あらゆる動物には他との動物との戦いが常に存在しているわよ。どうしてそのように神仏が地球を生み出したかは理解できないわ。でも仏様は仰っているわ。お釈迦様が亡くなって千年間を正法時代、次の千年間を像法時代、そして末法に入る、そのとき千五十二年。どうしようもない戦いが続いていく世界・・・」
 いつもの元気が全く薄れたような母を珍しく垣間見た。よほど世の無
情を全身に感じていたのだろう。その束の間の姿は一変、いつものアグレシティヴな姿の母に戻った。

 父の出兵から戦争は激しくなってきた。
「盛雄、おまえは何をしとるとか!はようせんか!ぐずぐずしてたら戦争に勝たんたい!」
 上官から幾度となく殴られていた。
 このような光景は父に限ったことではなく日常茶飯事の出来事でもあった。
 初めのころの隊員たちは、戦争の傷より体罰の傷が多かった。
 日に日にさらに戦況は増して行った。
 父の腹違いの兄は先にシベリアに出兵していた。
「戦況も激しく、冬のシベリアでの生活は苦しいだろうなあ」
 
 隊の仲間とは、家族や兄弟の話題が中心であった。郷里を思うことでみなの結束力は強かった。そして、戦争の中にもみんなが喜ぶようなことを父は行っていて、いつも隊には笑いの声があった。そのような父は常に仲間の中心にいた。

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