「お父さんとお母さんの頑張りで大きな財産が生まれました。そのような両親に対して、皆さんは、どのように思われますか?」五人の子供たちは、じっと下を向いていた。続けて浩は、「財産というものは大変なものです。素晴らしくもありますが、その財産には多くの思いが入っています。良き思いもあれば、怨念みたいな思いもあることがあります。そのように考えますと、残された財産に対して、先ずは感謝と敬意を持って臨む事が大切です」子供たちはさらに神妙な顔になっていた。あ浩は「摘出子と非摘出子の法的問題は?」今までじっと机上に置いてある書類を見続けていた藤光は、待ってましたとばかり、咳き込みながら「摘出子の方々と非摘出子の方々がいらっしゃいます。民法では、ここに居られるお母様の子供さん方とお母様でない子供さん方との差をつけています。まだ認知もされていませんが、お母様でない方々の方から提示されました遺言書らしき書類などから総合判断しましてお父様の子供さんである事は間違いなく、非摘出子としての存在が証明されるでしょう。ただお父様からは、まずは全体の五十%のうちの四十%をお母さんに、残りの十%を養子にしようと思っていたニ人の子供さんを立派に育てた鈴子さんに、残る五十%は子供たち五人には平等に財産をと記載されています」暫くの間、静まりかえった。この時間がかなり続いた。そして浩は徐に「お父様の仰る通りにしませんか?」誰ともなく「はい」「はい」「はい」と木霊するように返事が帰って来た。「お父様も、今は寂光浄土できっと喜んでいらっしゃることでしょう!よくよく考えてのお言葉だったと思います。こうして皆さんが元気に今を生きる姿、そして更には、お互いを思いやり心を望んでいらっしゃったことでしょう!これからは、みなさんでお母様方をしっかりと支えて、家族みんながあたたかく仲良く暮らされる事が、追善供養となるかと思います」一同はしんみりと聞き入っていた。その曇った空気の中に、光が一線入って来たかのように、長男が「ありがとうございました。私たちは幸せものだと思いました。世界はまだまだ多くの貧困の状況です。そのような中でも私たちは今豊かに暮らしています。その上でさらに財産が頂ける事は勿体無いと思いました。父親の思いの通りを頂き、私は頂いた財産は、これから社会の為になることへの行動を行なって行こうと思います。父はよく社会活動にも力を注いでいました。そして今日からは兄弟姉妹五人が、仲良く交流して行きたいと思います。」と、語るや否や、そこには笑顔の花、部屋中が桜の花が咲き乱れるかのように明るくなりました。※この時の民法では、非嫡出子には、嫡出子の半分の相続権しか認めていませんでしたが、平成二十五年九月四日に最高裁判所が違憲判決を出し、民法が改正され、現在は嫡出子も非嫡出子も同じだけの相続権を持ちます。父親が亡くなった兄弟姉妹三人と認知した子ども二人の合計五人の子どもは完全に均等の相続権を取得します。
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