栗谷利夫著「夢現」

『MUGEN(夢現)』第42話 アメリカ視察~

さらにより素晴らしい医療福祉の機能を学ぶ為に、世界のリーダーアメリカへと渡った。メンバーは、横浜の元町に携わっている建築士、大手建設の所長、そして盟友の濱高君と私の四人であった。行く前の浩の心は、抑えきらないほど高揚していた。日本の隣国には行ったものの、遠く離れた欧米にはまだ一度もなかった。私たち日本の反対側にある大国アメリカ、何故か宇宙ロケットにでも乗船するかの躍動感であった。入念に事前調査をして出発した。最初の到着地はシカゴであった。十九世紀後半から二十世紀中ごろまで、アメリカ国内の拠点として発展、シアーズ・タワーなどの摩天楼の姿にはびっくりした。今にも車が飛んできそうな十階以上の立体駐車場をはじめて目にした。そして一階の駐車場の上はまさ芝の庭園風の広場、広場というより果てしない緑の大道路。驚くことばかりであった。翌日他の研修団と合流、名高るメイヨークリニックを訪問した。医療関係者であれば、一度は行ってみたい憧れの医療機関であった。高度医療とともに経営の公共性等多くを学ぶことが出来た。研修団の中にキラリとひかる人物と出くわした。浩と同じように、よく質問をしていた。そのことからも特に親しくなり、以後多くの交流が始まった。多くの調査資料を発刊している研究所のチーフで、「老人保健施設の経営」をはじめ、多くの執筆依頼を浩は受ける間柄になった。あっという間の二日間の研修も終わったが、地域医療で頑張る木玉院長をはじめ多くの友を得、このことも今後の浩の行動への大きな人脈へと広がっていった。そして、まさに世界、地球の最も中心都市と言われるニューヨーク、マンハッタンへと。エンパイアステイトビルディングの最上階に登り、世界の王になったような気分に満喫した。縦横に見事に整列された道路、五番街を歩くとここは世界のブランドショップがずらりと並んでいる。不動産王のトランプタワー、世界の大女優オードリーヘップバーンの「ティファニーで朝食を」、ティファニーに入ると、今まで感じたことのないゴージャスな雰囲気の中にスッポリと包み込まれ酔いしびれていく浩であった。セントラルパーク、メトロポリタン美術館、グッゲンハイム美術館では、キュートなモジリアーニの絵の前に暫し心を奪われてしまった。世界の金融をリードするウオール街、百十階のワールドトレードセンター、のちに二〇〇一・九一一の大きなテロ被害で崩壊するとは思う隙間もなかった。そして、バッテリー・パークからリバティ島へと、アメリカ建国のシンボル自由の女神像へと。翌日ハーレムにも。それから、ロッキーの場面のフイラデルフイア、ウオーターフロントとして成功のボルチモア、政治の中心ワシントンへと。さらに、フロリダ・オーランドに渡り、デズニーワールド、正にこの世の別世界。カントリー ミュージックの伝説の地であるナッシュビル、そして今回の大きな目的の一つアリゾナ・フェニックスの人工的に作った高齢者主体のコミュニティのサンシティを訪問した。到着してクーラーの無いタクシーにのったものの凄く暑いので、窓をあけると何と外はもっと暑く四十度をはるかに超えているということですぐさに窓を閉め、耐えきるかなあと思う間に到着、降りてみると暑いものの意外とカラリとした気候であった。高齢者が趣味なのか実益なのかわからないショップや作業場があり、テニスコートの近くでは、元気良さそうなシニアの女性がつかつかと浩の前に来て「ここは住み良いところ、あんたもここに引っ越しておいで」と、「ああ、このようなシニアタウン創らなければ」と、浩の顔は引き締まった。

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